拝啓、忌野清志郎

あなたが亡くなってから随分経った気がします。ソウルは魂ですから、あなたにとって生死はあまり関係ないのかもしれませんが、僕のような俗人には、あなたがこの世に居ないことが寂しくて堪りません。


はじめましてついでに、ちょっと僕の話を聞いてください。僕は帰れない二人であなたのことを知ってから、もうずっとあなたの曲・詩・本・言動にヤラれっぱなしでした。どのくらいヤラれていたかというと、方々回って集めたあなたの書籍を全て燃やしてしまったほどです。そうでもしないと、自分のアイデンティティを確立できなかったのです。それくらいヤラれていました。


そんな思春期を経て、大学に入り、僕はあなたの親戚だというギター弾きに声をかけられました。


「キヨシローに会いたいなら紹介するぜ」


その一言に、僕は何故か無性に腹が立ち、こう言い放ったのです。


「いや、俺は自分の人生の中で接点を見つけて、一人の作り手として対峙したいし、きっとそうなると思う。だから、お前の手助けはいらない」


根拠のない自信は若者の特権だと言いますが、あなたの訃報を聞いて、まずこの事を鬼のように後悔しました。あなたの親戚にすがりついてでも、土下座をしてでも、やっぱりあなたには会っておくべきでした。


あなたが亡くなってから、僕はつまらないプライドに左右される人生を改めることにしました。自分を物語る物語が半端でも、尊敬する人には自分から会いにゆくことにしたのです。もう二度と、あんな気持ちは味わいたくない。この後悔が、今の自分を根底から突き動かす原動力になっています。


焼き捨ててしまった本も、結局また古本屋を巡って探しています。ロックは死ぬとモンキービジネス化しますね。あなたが残した書籍は、今とんでもない値段で売買されています。結局、僕はあなたの影響から逃れられないのだと思います。それでいいのだとも思います。




最後に。

今まで本当にどうもありがとう。これからもよろしく。